医療法の改正により、医療法人に関する情報の調査及び分析等を行うための新たな制度が始まりました。
医療法人は今までの「事業報告書等」とは別に、病院・診療所ごとの経営情報等を都道府県に報告することが義務化さ
れました。
報告内容が増えており、病院・診療所ごとの経営情報等のため、毎月の管理からしっかりと準備をしておく必要があります。
医療情報データベース
現在の保険点数や補助金・助成金が十分であるかを判断するために、各医療法人がどれだけの利益又は損失を出して
いるかの情報を収集し、今後の保険点数の改定や補助金・助成金の金額決定の参考にするためにデータベース化をする
ことを目的とし、医療法人に提出を義務化することとなっております。
経営状況に関する情報
今までの事業報告書等では、「医業収益」、「医業費用」といったかたちでの報告となっており、その内訳の記載につ
いてはされておりませんでした。
今回の改正で少し細かな内容の記載が求められており、記載内容は病院と診療所で異なります。
診療所の記載内容は下記のようになっております。
「医業収益」
・入院診療収益
・外来診療収益
・その他の医業収益
「医業費用」
・材料費(医薬品費、診療材料費、医療消耗器具備品費、給食用材料費)
・給与費(役員報酬、給料、賞与、賞与引当金繰入額、退職給付費用、法定福利費)
・委託費(給食委託費)
・減価償却費
・器機賃借料
・その他の医業費用(水道光熱費)
※カッコ内の事項は、初年度は任意となっております。
上記の他にも医業外収益などの項目についての記載が必要です。詳細は各都道府県などの書式にてご確認ください。
職種別給与総額及びその人数に関する情報
医師、歯科医師、薬剤師、看護師、歯科衛生士などの職種ごと、かつ常勤・非常勤の勤務形態別(区分できない場合は
合算での記載が可能)の給与・賞与総額及び人数を記載する書類となります。
原則は1月1日から12月31日までの期間の情報を載せることとなっておりますが、難しい場合は会計期間で記載する
ことも出来ます。
対象法人
全医療法人が対象となります。
例外として「四段階税制」を適用している法人は報告対象外となります。ただし、その旨を記載した届出が必要となり
ますので注意が必要です。
※四段階税制とは、医業収入7,000万円以下かつ診療報酬収入5,000万円以下の場合に適用を受けることができる、いわ
ゆる概算経費の特例のことをいいます。
この制度の目的となっている保険診療を行っていない医療法人も対象となっておりますのでご注意ください。
制度開始時期
令和5年8月1日以降に決算を迎える医療法人が対象となります。
法人税の申告は通常決算日から2ヶ月後の申告となりますので、8月決算の法人が10月に申告することとなりますので、
この10月からこの制度への対応が必要となります。
罰則
できれば報告したくないという経営者の方も多いかと思いますが、報告しない場合には医療法第64条の罰則規定が
適用されますので、まずは業務改善命令として提出を求め、従わない場合には業務の停止若しくは理事の解任を勧告さ
れることとなります。
【参考】医療法第64条
1 都道府県知事は、医療法人の業務若しくは会計が法令、法令に基づく都道府県知事の処分、定款若しくは寄附行為に
違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、当該医療法人に対し、期限を定めて、必要な措置をとる
べき旨を命ずることができる。
2 医療法人が前項の命令に従わないときは、都道府県知事は、当該医療法人に対し、期間を定めて業務の全部若しくは
一部の停止を命じ、又は役員の解任を勧告することができる。
3 都道府県知事は、前項の規定により、業務の停止を命じ、又は役員の解任を勧告するに当たっては、あらかじめ、
都道府県医療審議会の意見を聴かなければならない。、
届出に備えて
今回の改正では病院・診療所ごとの報告が必要となっております。
材料費や給与費は施設ごとに分けていても、減価償却費を個別に計算していない場合や、診療所を跨ってかかる経費の
按分について決めていないといった事例がありますので、報告の際に困らないように毎月の経理からしっかりと対応して
いく必要があります。
医療機関の税務は専門家へ
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